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[R18][ShimaSen] 据え膳食えぬは食わせるまで。

Author: 干し芋

Link: https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17775553

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※作者が方言の理解があやふやなため作品内の方言がおかしいところがあると思います。

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"相棒"。

一緒に仕事などをする仲間、相手。

志麻くんは本当にできた人間だと思う。顔は男の俺から見てもぶっちぎりにイケメンだと思うし、浦島坂田船以外でもいろんな人と関わって顔が広いし、そんなところで鍛えられたトーク力はすごくて聞いていて飽きない。体格もがっしりしていて男気があってでも涙脆くて、みんなに愛されるキャラをしてて、誰からも人気がある。自分にはないものをたくさん持っている、そんな志麻くんが好きだった。

センラさんは本当にできた人間だと思う。こんなに人気が出るまでずっと会社員と活動を両立させていたのだし、どんな人とも明るく接していて今やグループ外からも引っ張りだこだし。メンバーのどんなボケも丁寧に拾ってくれて、相手を立てるのが得意で、本当に話していて楽しい。なんでも器用にこなす、そんなセンラさんが好きだった。


────俺の隣なんかもったいないくらい、素敵な人。


『女性のタイプ?そうやなぁ』

『金髪ショートカットで...美脚で料理が上手...高身長だとええなあ』


「......なんで俺じゃだめなんやろ...」

浦島坂田船を結成して数年。初めて会ったとき、いやネットで知り合ったときからの彼への尊敬や憧れの気持ちは、ゆっくりと時間をかけて渦を巻く恋愛感情へと進化してしまった。

男同士なんて絶対ないと思ってたし、女の子が好きだとずっと語ってきた恋愛マスターがこのザマだよ。
それも、あの整いまくった顔と優しい性格のせいなんだけど。

志麻くんは男でもいけるとかなんとか、そんなことをどこかで聞いてしまったせいで。

見た目から好かれたくて、黒かった髪を久しぶりに染めた。
毎日の風呂上がりに、ちょっとお高めのボディミルクを塗りこんでみた。
陸上部時代から気にもしてなかった日焼けがちだった肌も、日焼け止めは必ず使うようにした。

気づいたら見た目も中身もめっきり女々しくなっている自分に驚くくらい。学生の時に人を好きになることはあっても、こんな気持ちは初めてで。

どうやったら志麻くんに好きになってもらえるんだろう。
そう考えながら毎日を過ごしていた。


『俺の相棒やからな』
『センラさんの歌が好きで』

彼にとっての特別が自分に向いていると確認するたびに、舞い上がりそうになった。

『そんなのビジネスやって』
『ほんまにやると思ったん?』

彼にとっての俺との関係は仕事上のものでしかないのかもと思うたびに、ギュッと胸が締め付けられた。


志麻くんの中での俺は、いったい何なの。


一度そう考え始めたら、モヤモヤした気持ちは募るばかり。
どうにかして確認できないものかとは思うものの、「私の事どう思ってるの?」なんて高校生みたいなこと聞けやしない。ましてや友達である以前に仕事の相方、それで気まずくなるなんて以ての外。


......と、思っていたけれど。
あまりにも、あまりにも。

「あ"ーーもう!!!!まーしぃは俺の事好きなん!?!嫌いなん!?!?」

枕に顔を埋めて大声を出すのも許してほしい。
本当にあの男は思わせぶりが過ぎると思うし、これで完全にビジネスの関係としか思われてなかったらどうしよう。
あんな顔の良い男の事だから、きっと相手にどう思われてるかなんて考えてないんだろうな。そうでなきゃこんなに振り回される必要なんかないはず。

悔しい。もう我慢ならん。俺ばっかりなんでこんな。

「...覚悟しとけやくそぉ、あほ、イケメン...」

一人の男の気持ちを散々振り回した報いだ。初代メンヘラ恋愛マスターナメんなよ。
布団でバタバタと悶えるアラサー、覚悟を決めました。


志麻くんに漢気があるかどうか、試してやろうじゃないか。


「おじゃましまーす」

それはツアーのためのリハーサルの帰り道。久しぶりに一緒に飲まないかと志麻くんに声を掛けたら、喜んで承諾してくれた。サシで宅飲みは半年以上していなくて、だからこそここが絶好のチャンスだと思って。

この機会を逃すわけにはいかない。

「うわ~~志麻くんち久しぶりや!!」

「ごめん散らかってて」

「俺んとこもあんま変わらんよぉ」

道中のコンビニで買いまくった酒の缶を冷蔵庫に押し込んで、つまみの袋をテーブルにぶちまける。
柔らかいソファにぼすんと座り込むと、目の前に冷えたビールが二つ置かれた。

「おつかれ~~今日のリハはさすがに疲れたな」

「いやほんまに脚も腰も痛いわぁ」

「はは、ほんならストレッチせな」


今日の飲みの誘いには目的があった。

──何としてでもこの天然たらしな志麻くんに、一泡吹かせてやりたい。彼の心に、深く爪痕を残してやりたい。あわよくば、彼の気持ちも確かめられたら。

計画はこうだ。
酔っ払ったふりをして、彼に迫って。次の日には全部忘れたふりをして、なかったことにする。

いささか卑怯な手ではあるとは思うけれど、そうでもしないとあの男は何も教えてくれないような気がする。なんて言ったって、他人との関係性を乱さないようにすごく気を遣ってる人だから。


据え膳食わぬはなんとやら、って言うでしょ。
なぁ志麻くん、漢を見せてくれよ。

なんて、自分を好きでいてくれたらと願う俺のエゴ。

もし志麻くんがほんとに俺のことをビジネスフレンドとしか思ってなかったとしたら...それはまぁ、酔っ払った時のやらかし話として、また次飲むときのつまみにしてしまえばいい。
それが彼の中にずっと残ったとしても俺は全く覚えてないから、彼が一人でもやもやすればいいんだ。


「このセンラさんが買ってきたつまみ美味いなぁ、もう一本あけよかな」


二人とも随分と酔いが回って、時計の針も真上を指そうかという頃。

これからの展開に期待が止まらなくて、口角が上がるのを必死に抑える。
理性とか倫理観とかは全部アルコールのせいにして吹き飛ばして、これから俺は相方を襲ってしまうんだ。
ごめんね、志麻くん。

志麻くんの飲みかけの缶をそっと取り上げて、ローテーブルに置く。驚いて固まる自分より少し低い彼の肩を掴んで体重をかけると、油断していたであろう志麻くんはいとも簡単にソファへと倒れ込んだ。


「え」

混乱した志麻くんが目を見開く。
あぁ、その瞳に映り込む欲望に塗れた自分の顔のなんと醜いことか。

「ねぇまーしぃ」

とろんと蕩けた顔をしてみせて、押し倒した志麻くんの上に跨った。
既成事実を作ってしまえば彼も逃げられないんじゃないかなんて、バカみたいな考え。男の俺には、子供を成せる機能なんかありはしないけれど。

「センラさんなにしてんの、ほら降りて、ッ」

すりすりと股間を撫で上げジーンズのボタンに手をかけると、志麻くんはさらに焦りだす。
志麻くんの興奮した顔も、身体も、全部見てみたい。見せて、見せて。

「んふふ、まぁしぃのおっきくなったところ、一回見てみたかったんよねぇ」

「ほんまに、やめろって...っ」

うろたえる志麻くんは眉をこれでもかと下げて、子犬みたい。
今の俺はきっと、酔っ払っておかしくなってるように見えるんだろうな。いや、本当にそうだったら良かったかもしれない。

どうせなら全部酒のせいにして、志麻くんに募らせたこの重たい気持ちごと、全部記憶から消せたらよかったのに。

「ほんまに男でもいけるんやねぇ、志麻くん...あ、ちょっと固くなってる。あはは、やばぁ」

「なぁセンラさんこれ以上は...っ!」

「なんで?せっかくええとこまできたやんかぁ」

「だから、それが...!」

「俺がしたいんやから、付き合ってよ」

ごくり、志麻くんの喉が鳴る。

のまれて、絆されてしまえ。

一晩の間違いでは済まなくなってしまえ。

一生消えない傷跡になってしまえ。

「...うわ、でか」

「なぁ自分が何やってるかわかってんの、あんた」

今、顔を真っ赤にして俺の上に跨り愚息を楽しそうに弄っているのは、恋人でもなくセフレでもなく、親友で相方で相棒の、そして絶賛俺が片思い中のセンラさんである。

「おれのが小さく見えるやんかぁ」

「っお、俺のせいなん...?」

俺よりも細くて白いセンラさんの手に導かれて、彼の下着に手をかけた。

ああ、夢にまで見たセンラさんの素肌が。やばいお腹めちゃくちゃ白いしつるつる。てか毛薄くない??
待ってそれよりパンツ下げたら見えちゃうからいやこの人触ってとか言い始めたんだった、どうしよう。

「...うぉ」

「なんやぁその反応ぉ」

「いや別に...」

俺のより一回り小ぶりなそれは、初めて見たわけじゃないのにめちゃくちゃドキドキしてしまう。
好きな人を目の前にしたらドキドキするし、好きなちんこを目の前にしたらドキドキするやろ。崇めろこのすべすべ肌。

「...触るよ、センラさん」

「...ん......ぅ、あ」

「痛ない?」

「ふ、きもち、ぃ...」

ぐち、ぐち。ゆっくりとまとめて二人分扱く。酔ったセンラさんのほうは本領発揮できていないようだけれど、それでも俺の肩に顔をうずめて切なげに声を上げる姿はどうにもいやらしい。

向こうから誘ってきたんだから好きにしてもいいよね、なんて悪魔の志麻が脳内で囁くけれど、それに反して握り込んだ指は震えが止まらない。なにしてんだ、俺は。こいつは相方だぞ。

「...しまくんもっと早く、ぁん...っ」

「...っとにもう...」

センラさんはすけべ方面に関してこんなにも積極的だったのかと知りたくなかった事実に驚かされる。俺の手の筒に腰を振るセンラさんは男臭くもあり、くねらせた細い腰は女性的な色気もあって、不思議な光景だった。

揉み込むようにしていた手のスピードを上げ、溢れる液体を絡めてじゅこじゅこと音を鳴らして扱き上げる。

俺がいつもあんたのこと考えながらしてる時みたいに、強く、激しく。

「あ、ッあ、だめ、っそれ、だめっ」

男同士、触れ合ううちに相手の気持ちいいところも自ずとわかってくる。早くするついでに追い詰めるようにてっぺんを手のひらで擦ってやると、わかりやすく腰がガクガク震えた。どうやら絶頂が近いらしい。

「~~う"、ぅ"、っ」

長くて白い脚がびくびくと跳ねて、握り込んだ手が白濁で汚れる。耳元ではくはくと熱い息を吐き出すセンラさんがどうにも愛おしく感じて、彼の背中を反対の手でそっと撫でた。

「大丈夫?」

「......ん、もっかい...」

「......本気??」

いやいや耐えろ、耐えるんだ志麻。ここで我慢しなかったら全てが終わるだろ。この人は今酔っ払ってる。なんかのおふざけで、酔っ払った時のいつものテンションで、今日はちょっと悪酔いしてるんだ。
ここで欲望に任せて抱き潰すなんて絶対ダメだ。何年もかけて築いた相棒の立ち位置を自分から崩すつもりか。

「...ふ、はぁ、ぅ...」

代謝の良いセンラさんは俺よりもずっと汗をかいていて、もたれかかられた肩がじっとりと濡れる。

「しまくん、まだやろ...?」

こちらを見つめる瞳は、初めて見るくらい蕩けていて、熱くて。燃えるような欲望を秘めたその目が「ここでやめていいと思うなよ」って訴えてるような気がした。

これ以上進んだら、もう元の関係には戻れないかもしれないのに。

アルコールの勢いで始めた行為は、案外あっさり終わってしまった。センラさんの勃起したそれも、とろとろに蕩けた顔も、イキ顔も、全部全部が初めて見るものだった。
最後まではしなかったとはいえお互い辞め時がわからなくなって、どっちも二回ずつ出した辺りで酔いと倦怠感に負けたセンラさんは気絶するみたいに寝てしまった。

「......どうしよ...」

はぁ"、とおっさんのような溜息が漏れる。
頭がガンガンと痛むのは、酔いのせいだけではないだろう。

俺ん家の、俺のソファ。片思いしてるセンラさんが、汗でびっちょびちょのまま寝てる。湿っぽい部屋はお酒と性の香りでいっぱいで、なんだかひどく罪悪感に襲われた。これは賢者タイムだと言い聞かせて、センラさんの身体に飛び散ったどっちのものかもわからない液体を雑に拭き取る。

「...ごめん、ほんまに。こんなんするつもりやなかった」


あぁ、やってしまった。

本当はもっと仲を深めてから、ゆっくり距離を縮めて、ゆくゆくはお付き合いをして、ゆったりベッドでしたかったのに。
そもそも付き合うってところにすら辿り着いてないというのに、俺は彼に何をしてるんだ。酔っ払った相手につけこんでこんな爛れた行為に及んで、最悪だ。

どうしよう、どうしよう。好きだって伝える前に手を出してしまった。
ぐるぐるとまとまらない思考が、部屋に一人になった俺を苛む。

......いや、今はとりあえずこの人をベッドに連れていこう。風邪なんか引かれたらそれこそリーダーになんて言われるか。覚醒させるように頭を振って、気持ちを切り替える。

「なぁセンラさん、起きてぇ...」

ゆさゆさと身体を揺すっても少し眉間に皺を寄せるだけで、全く起きる気配がない。

「もうセンラさんほら...う"っ」

力の抜けた細い脚の下に腕を差し込んで持ち上げようとしたら、パキリと嫌な音が鳴った。この歳とこの腰で無理はするもんじゃないな。
諦めてその辺に放られていたパンツだけ履かせて、愛用の毛布をそっとかけた。

一人でベッドで寝るのもなんだか申し訳なくて、カーペットの上に寝転ぶ。少し冷えた床が「責任とれんの」って言ってる気がして、ソファのセンラさんの毛布のはじっこを少し借りて目を閉じた。


──明日、なんて言おう。これだけ酔っていたら、彼は覚えてないかもしれない。


大好きな彼に散々弄ばれて、友人関係では許されない行為をして。それで片思いをしてる俺だけがぐるぐる思い出して、彼はさっぱり忘れていつものように話しかけてくるんだろう。こんなの許されるんだろうか。いっそのことちゃんと好きだって言えばよかった。それでも君は忘れてしまうと思うけれど。深酒をした君は、よく記憶をなくすから。
神様はなんて残酷なんだろう。こんなことなら、朝起きて立ち上がれなくなるくらいに抱き潰したら、彼の中に何かを残せたのかもしれないけれど。

でもやっぱり愛しいセンラさんに乱暴なことも、少なくとも冷静な判断力もない状態で合意とも言えない性行為も、したくなかった。
心から大切にしたい、初めてそう思った人だから。


ソファに俺を寝かせた志麻くんが寝息を立て始めたのを確認して、目を開けた。顔のいい男の肩が規則正しく上下して、やっぱりまつげ長いなぁと思わされる。でも、今はそれよりも。

『...ごめん』

寒がりな志麻くんの家のエアコンと毛布で暖かいはずなのに、きゅうと心臓が冷たくなった気がする。

押しに弱い志麻くんの事だから、俺が酔って「好き」って詰め寄ったら堕ちてくれるんじゃないかと思ったのに。

『こんなんするつもりやなかった』

さっきぼそりと彼が口にした言葉が胸の中で渦を巻く。
ごめんってなんだ。

「もっと喜んでくれると思ったのに」

────すき、もっと。

背徳感すら吹き飛ばすような快楽と熱さの中で勢いに任せて伝えた思いは、確実に彼の耳にも届いていたと思う。「俺も」って言葉を返してくれるんじゃないかと、期待してたのに。
それどころか彼は困ったように少し顔を曇らせた後、何も言わずに行為を続けた。

「俺のこと、好きなんやなかったの」

すやすやと眠る端正な顔立ちに話しかけたところで返事は返ってこない。

じゃあ今までのあれは全部、本当に仕事の仲間としての好意であって、俺自身のことはどうでもよかったってこと?
好きなのは、想ってたのは、俺だけやったってこと?

......そっか。

行為後の虚無に落ちるような感覚が、志麻くんへの想いと混ざり合って淀む。

ああ、だめだ。俯いたら視界が滲みだした。こんなとこで泣くなんてみっともないぞセンラ。女々しいぞセンラ。

「...やっぱり、俺だけ勘違いしてたんや...っ」

もし本当に志麻くんが俺の事なんかどうでもよくて、俺の独りよがりだったなら、全部忘れてなかったことにしなきゃって思ってたのに。
いざ本当にそうらしいと知ったら、苦しくて苦しくて仕方がなくて。


...あかん、ほんとにこれ以上泣いたら明日目腫れてまう。無理やり思考を投げ捨てて、志麻くんがかけてくれた毛布に潜り込んだ。


あの後、俺は朝まで狸寝入りをして、そして全部覚えてないふりをした。
志麻くんは俺に「昨日のこと覚えてる?」と聞いてきたけれど、俺は首を横に振った。
何度も好きだと縋ったことも、俺のおねだりに困っていた志麻くんも、全部水に流して、忘れて欲しかった。いや、俺自身が忘れたかった。自分だけが勘違いをして彼に迫ったなんて、苦しいから。

『......あぁ、そう』
良かった、というような表情をした志麻くんの顔が頭から離れない。彼にとってあれは嫌だったのかなと思うと、申し訳なさで押し潰されそうだった。
そんなこんなであの夜の件はなかったことにできたと思ったんだけど。

あの日酔ったふりをして襲ってから、志麻くんとはほとんど話していない。いや、話せていない。
ライブの打ち合わせやリハーサル、収録の時も含めてちょこちょこ顔は合わせるのに、目が合うたびにそっと視線を逸らされている気がした。かといって険悪なムードになるわけではないけれど。元々うらさかほどベタベタする仲でもない俺達は振り付けの確認くらいでしか話さないし。

「まーしぃ、あの」

前言撤回。今露骨に無視されました。なんなら180度向き変えられました。


あまりに俺と志麻くんがギスギスしてるもんだから、そういうところはすぐ気づくうらたんにはもちろん、なんなら鈍感で有名な坂田にさえ何があったのなんて聞かれる始末だった。

言えるわけがない。酔った勢いでメンバーとやらしいことして関係悪化しましたなんて。


彼は俺が首に腕を回して言った「好き」すら酒のせいだと思ってるんだろうか。
たとえ酔っていようとも、愛してる相手にしかそんな言葉は言わないに決まってるのに。そこまで見抜いて欲しかったのに。

「あ"~~もう!!!!」

だめだ。耐えられない。

「ちょっと来て」

そっと距離を取られていた彼の腕を無理やり掴み、リハーサルスタジオの廊下へ。振りほどこうとする志麻くんを無視して、そのまま空き部屋に入って鍵をかけた。

「なぁ」

「...なんや」

「俺の事避けてるやろ」

「...いや、別に」

「じゃあなんでここ一週間ずっと目線が合わない訳」

「......やって、あんなことあったら気まずいやん」

覚えてないって言ったじゃん。なんでそこまで引きずってるんだよ。
どうでもよかったんなら、なかったことにすればいいじゃんか。
最初の思惑通りに志麻くんが悩んでるというのに、それすら悔しいと思ってしまう俺は末期なのかもしれない。

「......志麻くんあんたは、ッ」

ずっと女の子が好きだって語ってきたこの俺が男を好きになるなんて思わなかったのに。
それを覆したのは、志麻くんと一緒にいた時間だったんだよ。

「あの時の事、意識してるんやね」

「てことはセンラさんも覚えてるんや」

心の底に渦巻いた気持ちが溢れ出して志麻くんにぶつけることしかできない自分を、どうか今だけは許してほしい。

「じゃあなんで覚えてないとか、嘘ついて...」

「俺がどんな想いであんたのこと誘ったかわかってるん!?」

突然大声を上げた俺に、志麻くんがびくりと肩を揺らす。
何が相方だ、何が相棒だ。弄ぶのもいい加減にして。

「志麻くんがずっと、ッ俺に、好きやって言ってくれてたの本気にして...っあんな風に志麻くんのこと試して、でもっ...志麻くんは全然乗り気じゃなくて...ッ」

そんな顔しないでよ。もっと苦しくなるんだよ。

「恥ずかしいとか気まずいとか言っといて、ほんまは俺のこと、ッあの日のこと、嫌やったんやろ...!」

気づいたら溢れていた大粒の涙は、両目から零れて止まらない。
慌てたようなそんな顔もいらないのに。
こんなの八つ当たりだってわかってるけど、口から溢れ出す言葉も止まってくれない。

「ごめん...好きになってごめん...っ」

ぐしゃぐしゃに泣いてるのもみっともなくて恥ずかしくて、志麻くんに背を向ける。

「......もう仕事以外は近づかないから、許して」


それだけ言い捨てて立ち去る、そのつもりだった。



「......ごめん、なんか勘違いさせてたみたいや、センラさん」


「もういいんです、ほっといてください」

「違うんやって」

「知らんもん...っ」

刹那。

ふわり、志麻くんに向けた背中がぬくもりに包まれる。
今しがた背を向けた彼のたくましい腕が回されて優しく捕らえられたことを理解するのに、少し時間がかかった。



「俺も好きなんよ、センラさんのこと」



「......は?」


「そんで、本気で愛してるってセンラさんに伝えたかったんや」


頭が考えることをやめてしまったようで、彼の言葉を反芻することしかできない。
本気?志麻くんが?誰に?

「センラさんはさぁ、ずっと昔から女の子が好きだし男は無理って言ってたやろ。じゃあ俺は、同性のセンラさんを好きになって一方的な好意をぶつけるなんて申し訳ないなって思って」

「...っでも、でもあの時、好きって言ったのも誘ったのも俺やったやんか、なんで...!」

「...ほんまは死ぬほど抱きたかったしむちゃくちゃ興奮したけど、酔っ払って前後不覚なセンラさんに手出したら強姦やん、そもそも付き合ってないのにエッチしたくないやん」

「......なんでそういう時ばっかりそんな紳士なん...そんなプレイボーイみたいな顔しといて...」

「褒められとるんかそれは」

じゃあ俺は、この男が俺を大事にしたいと思ってたせいであんな恥ずかしい思いして、こんな空回りして、今みっともなく大泣きして、ってこと?

「...っこの、天然たらし!!鈍感!!あんたのせいで、俺どんだけ...ッ」

「ほんまにごめん、まさかセンラさんがそんな風に思ってたとは思ってなくて...ほんまにいつも通り酔っ払ってんだと思って...」

「童貞やないんだから...俺のアタック完全スルーはほんまに、ないって...もう...」

やばい、また泣いちゃいそうだ。今までの不安とか葛藤とか、全部しょうもないことだったんだって消え去ったら、安心してまたじわりと目頭が熱くなる。

「じゃあ、その...両想い、ってことで...これからは」

「センラさんは本当に俺でいいの...?」

「志麻くんがいいの」

「そっか」

あたたかい腕の中で、自分より一回り小さい彼の背中にそっと手を回す。

「ずっとこうしたかった...」

「なんか遠回りしてもうたね、俺たち」

「...うん」

かりかりと頭をかくのは志麻くんが照れた時の癖だ。

「ちゃんと恋人になりたい。もっと一緒にいたい」

「俺も。ほんまに大好きなんや、センラさん。もっと早く言えばよかった」

「......恋人なら、センラがいい」

「......センラ」

「よろしい」

愛おしそうに俺の名前を呼ぶ志麻くんは、どこか泣きそうにも見えて。
溢れる気持ちが抑えきれなくて、目の前の体温にぎゅうと抱きついた。

「...なぁ志麻くんなんか当たってませんか」

「ごめんなんか据え膳センラ思い出したらムラムラしてきた...」

「っアホ!!最低!!!」

と、その時。コンコンとノックが二人だけの部屋に響く。

「まーしー?センラ?」

「「っっわぁ"!!!!!!!!!!!」」

「なにしてんの、そろそろ次の振付確認したいんだけど...てかなんで鍵かけてんの」

「「今行きます!!」」

「早くしてよ~~」


そしてまた二人だけが静寂に取り残される。
大の大人が、なんならおっさん二人が抱き合ってるこの絵面は傍から見たら相当やばいんだろうな。

「...ふ、ふふっ」

沈黙を破ったのは、どっちの笑い声だったか。


「...ね、志麻くん。あの時の続き、また今度してよね」

「...うん」

「じゃあトイレ行ってらっしゃい」

「...はい」

あはは、って二人顔を見合わせて笑う。なんだかすごく清々しい気分だ。
さっきまであんなにぐしゃぐしゃだった気持ちが馬鹿みたい。

こうして思いがけないきっかけから、拗れかけていた二人の関係は元通りに、いやそれ以上に、綺麗にまとまってしまったのだった。

「...えっ今なんて呼んでんの??」

「センラ」

「いつの間に解けたん、それ」

「去年くらいから呼び捨てになった」

「そう」

「初めて呼び捨てした時、センラ『あ?』って言わんかった?」

「あんまりそこの呼び方に違和感はなかったけどねぇ」

「いつのまに?って感じやなぁ」

「そーお?」

────そういえば自分から呼ばせたんやったな。

年上のくせにいつまでもさん付けしてるし、いつまでたっても告白してくれなかったし。付き合ってそこそこ経つのに、キスも照れてあんまり自分からしてくれないし、夜のお誘いもだいたい俺から。

どうしたって好きな子へのアプローチが下手くそで、でもそんなところも今となっては可愛らしい。
逆に大事にされてると思ったら嬉しくなってくるくらい。

「...今日の月ラジでも話しとったけど、ほんまにまーしーとセンラっていつから仲良くなったんかわからんよな。気づいたら付き合ってたし」

「まーしぃ全然アタックしないから一生付き合えないんじゃないかと思ってたよ。手伝ってあげようかと思ったくらい」

「なんなら一時期喧嘩してなかった?一年前くらい...いやでもあの辺で付き合い始めたんやっけ?どうなってんのお前ら」

「んふふ、まーしぃと俺の秘密やで」

「あーーすぐそうやって」


最初は全然積極的じゃなくてあんまり好かれてないんじゃないかと思ったけど、本当は彼が自分から行動する勇気がちょっぴり足りないだけ。ちょっと寂しくなったら、俺のほうから甘えてやればいい。

今度はちょっとえっちなコスプレでもして出迎えてやろうかなんて考えていたことも、奥手な君には内緒にしておこうか。


「でも...そうやね、まーしぃは......」

案外弱気な志麻くんには、この俺が張り切ってとびっきりの愛をぶつけてあげなきゃね。

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