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[R18][UraSaka/ShimaSen] #2 おっぱぶで働いてるせいで王子様を諦めようとした黄の話。

Author: 塩らっきょ。

Link: https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21689695

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ワンクッション!

この作品はnmmn作品となります。
意味がわからない方はバックでお願いします!

お名前をお借りしていますが、ご本人様とは全く関係ございません。
コメントやタグでお名前は出さないでください。
コメントはやいいね、すごく嬉しいです!


前作
手伝いで1週間おっぱぶで働くことになった赤の話。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19139239

のサイドストーリーになります。
前作を見なくても伝わりますが、見ていただいた方がsnさんの苦悩をより感じていただけると思います。

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きっかけ?そんなのはもう忘れた。
でも確か、俺の一目惚れってやつやったと思う。

お金がどうしても必要で、働き出した男がキャストっていうちょっと変わったおっぱぶは俺にとっては働きやすい場所だった。

恋人もいない、体を触れられることにもそこまで抵抗なく、それにこの店はしっかりしていてそれこそおっぱいを触る以外のことはNG。
それでお金をもらえるなんて、俺にとってはかなりの好条件。

「センラ、次のお客さんお願いね」

「わかりました」

「ご新規さんみたいだから頑張ってね」

仕事にも十分に慣れてきて、お客さんとも楽しく会話ができるようになってきた頃、出会ってしまった。
目があっただけでドキドキするような、そんな人に。

仕事終わりなのか高そうなスーツを着崩して、もの珍しそうに視線を店内に向ける。
ワックスで整えられたグレーの髪ををぐしゃぐしゃと手で解いてから少し長めの前髪がかかったその瞳が、すっと俺を捉えた。

「なぁ、大丈夫?さっきから固まっとるけど」

「っ、え、はい、すみません」

こんなお店に来るようなタイプには見えないその人。
どうしよう、声もかっこえぇ...
お客さんにこんなこと思ったことなかったのに...

気を取り直していらっしゃいませ、なんて声に出しても自分の鼓動がうるさすぎて不自然になってしまった。

「今日はなんでお店に来てくれたん?」

「俺が店を選んだんやなくて、ストレスたまってるって言ったら上司に勝手に予約されたんよね」

「そう、なんや...」

「男のおっぱぶなんて聞いたこともなかったし、酷い店なら帰ってやろうとも思ってたんやけど。...まぁ、案外悪くなさそうやな」

ふっと表情を緩めたその人は、俺の顔を見た後に上から下までじっくりと見るように視線を動かした。
でもなぜか、そこにいやらしさはなくて、なんだかこんな格好をしている自分が恥ずかしくなってきゅっとレースの裾を握る。

真っ白なベビードール。
胸と下半身だけを隠すような女性の下着見たいな際どい衣装。

顔が熱くて、体も...どうしよう、いつも通りおもてなしをって思うほど、頭が回らない。

「あのっ...お名前、伺ってもええですか?」

「志麻。好きに呼んでええよ」

「じゃあ、志麻くん...俺はセンラって呼んでください」

顔が熱い、あぁだめだ、今どれくらい時間が経ったのかもわからない。

「こういう店って、あんなのが普通なん?」

落ち着かないと、と酒のグラスに手を伸ばす俺の後ろにすっと指をさす。
その指先から視線を辿れば、他の店のことお客さんの見慣れた光景だった。
向かい合わせに膝の上にまたがって、首の後ろに腕を回して声を上げる。
普通、だけど...志麻くんに、俺がっ...?

「センラさんはせえへんの?」

「っ...志麻くんが、望むなら」

初めて店に来たお客さんだし、乗り気じゃないならそこまでしない。
ん、なんて志麻くんはソファーに深く座り直して俺が膝に上がりやすいような体制をとってくれる。
どうしよう、このままやと...心臓が持たん...

「じゃあ、失礼します」

少し大きすぎるくらいの店内のBGMで簡単にかき消されてしまうような小さな声。
いつもと同じ、これはただの仕事で、この時間が終わればきっともう会うことはない、そのはずなのに。
高そうなスーツの上に、僕の肌とレースがシワを作る。
じわりと体が熱いのは志麻くんの体温か、それとも俺のか

「どう、やろ...?」

「思ったよりも、いい眺め」

「ッ...」

センラさん、と名前を呼ぶ低く落ち着いた声、ゾクゾクするっ...
膝の上、俺の方が視線が高いから、下から見上げてくる余裕のある瞳に簡単に飲み込まれた。
うるさいと思っていたBGMも、隣の席の話し声も、今日は頭に入ってこない。
そんな俺にしまくんは畳み掛けるように声をかけてくる。

「ははっ、顔真っ赤やで。慣れてないん?」

「ッ...こんくらい、普通、やけど...っ」

「ほんまに?」

震える手で志麻くんの手を取った。
身長は俺のほうがあるはずなのに、しっかりとした体つきと俺よりも大きな手、細長い、綺麗な指。
ごつごつとしたその手は俺なんかよりずっと、男の人だった。
そんな小さいことにいちいち心拍数が上がって。
俺にされるがままの力を抜いたその手を胸元に引っ掛けて、先輩に教えてもらったようにレースの紐に指をかける。
胸の突起が見えそうで見えないくらいに布をずらして

「さわり...ますっ...?」

こんなに恥ずかしいなんて、思ったことなかった。
志麻くんの目を見ようと思ったのに、できなくて、いつもやってた仕事だっていうのに不甲斐なさと恥ずかしさにうつむく。

「確かにこれは、あのクソ上司が言ってた通り癒されそうやわ」

「...志麻くんっ...?」

「で?俺はどこまでセンラさんを好きにしていいん?」

どこまで...?それは、お店のルールのこと?
そんなの、軽く胸を触ったり、したとしてもキスまで。
店のスタッフが嫌だっていうことは禁止だし、あとは下半身に触れるのはだめ、とか色々あるけど

「志麻くんがしたいこと、全部...いいですよ」

「全部って...いや、まぁええか」

お店に入る前に新しいお客さんさんには受付でルールを伝えてる、それにさっき志麻くんが目を通していた冊子にだって書いてある。
しまくんはとっくに、俺をどうしていいか知ってるくせに...

「いけずな人やなぁっ...」

楽しそうに指先でいじるレースのリボン。
膝の上で腰を引かれて抱き寄せられて、逃げられなくさせてからゆっくりとリボンをといていく。
真っ赤な顔とは反対の、余裕で楽しそうな目

「センラさん」

鼓膜から脳に響いて溶かす甘い声。
吸い込まれるように、俺は志麻くんと唇を重ねていた。
まるで恋人同士みたいに優しいキスは、こんな場所には似合わない。
この人に委ねたいと思わせるには、十分すぎた。

「んっ...ふ、ぁっ...ンっ」

「センラさん、肌綺麗やね」

「しまくんはっ...触り方、えっちやねっ...」

「そりゃぁ、エロいことしとるからな」

「ぁっ...んん、っ」

普通の男の体よりは快感を拾いやすくなっている胸、それでもこんなに感じたことはない。
お客様を喜ばせるためのわざとらしい喘ぎ声も、煽るような言葉も、できない。

「ぁまって...舌はっ...ぁっあッ...っ」

「絶景やなぁ、これ、そんなにいい?」

「しらんよっこんな、ひぅっ...ぁっ志麻くんの、触り方っなんかへんやっ」

腰と背中にまわった腕が強く俺を引き寄せる。
唇から、首、鎖骨って味わうように下がっていく志麻くんの舌が到達したのはあらわになったピンク色。
焦らすように周りから、それから軽く吸って、舌で弾くように

「そんなっいややってぇっ...ぁっんっ」

「声、もうちょい抑えられへん?」

「っ...ごめっなさっ...」

「他の客に聞かせんのもったいないやろ?」

俺にだけ聞こえるようにしてて、なんて。
なんだか本当に恋人にでもなったみたいな会話やんっ...
ここはお店で、志麻くんはお客様で、しっかりしないといけないのに、仕事だから、だけど...

『お時間です』

「ぇっ...ぁ、」

ふわふわした頭で志麻くんに縋って、自分の中で葛藤している間に思っていたよりも時間が経ってしまっていた。
俺だけに声聞かせろって言われた時から何もかも真っ白になって、ほとんど記憶がない。
覚えているのは、初めてあんなに誰かの手が気持ちいいと思ったこと。

「延長とかできるん?」

『申し訳ございませんお客様。センラはこの後も予定が入っておりまして』

志麻くんが俺を見る。
センラさん人気なんや?って、どうしよう、なんて言おう。
もしかしたらもう会えないかもしれない、でもこれからの仕事のことを考えるともう会わないほうがいいのかもしれない、なんて

時間を伝えに来たスタッフもくたくたの俺を見て驚いている。
だって俺のこんなとこ、みたことないやろ

「志麻くん、だけやよ...こんなん、」

「そか」


ふっと小さく微笑んでくれたから、きっと俺の言いたいことは伝わったんだと思う。
席を立った志麻くんの腕をふいに掴んで引き留める。
声をかけようと口を開いて、

あれっ俺いまなんて言おうとしたっ...?

もう一回会いたいなんて、お客様にいうことじゃないのに。
だけどどうしてもこれが最後って思いたくなくて

「また、来てくれはるっ...?」

「センラさんがいいなら」

「俺はっ、志麻くんに...もう一度会いたいん、やけど...っ」

わかったって簡単に答えた志麻くんはひらひらと手を振って見せを出て行った。
それが、志麻くんと俺の始まり。

それから志麻くんは何度も店に来てくれて、その度に親しくなっていった。だけどそれ以上でも、それ以下でもない。
志麻くんは絶対にお店のルールを守ってくれる、だから俺も破らない。

"お客様と恋をしてはいけない"

そりゃそうだ。
だって恋人がいるならこんな店でやっていけないだろう。
俺だって思ったことはある。じゃあいっそのこと店を辞めてしまおうかって、でもだめだから。

この店をやめたって生きていけるお金はないし、志麻くんと付き合えるって保障もない。
俺のお客さんが志麻くんだけならいいのに、とまで考えたことだってある。
それでも俺にどうする術もなくて、結局諦めて現状維持。

そんな俺の現状が変わったのは、坂田が店に手伝いに来てくれた時からだった。

「っ、いや、あの、センラっ、僕さすがにこんなっ」

「ふふっこれだけで真っ赤なんて、ほんま純粋やなぁ。かわええとこあるやん?」

まるで働き始めの俺と同じような坂田の反応に思わず笑みが漏れる。
店の子が突然の体調不良、多分インフルエンザ。
どうしても人が足りなくて仲の良かった坂田に手伝いをおねがいした。

「安心しぃ、俺が絶対守ったるから」


なんて伝えて、なんだかんだでお客さんと楽しそうに話をしてくれる坂田に安心した、体を触られても嫌がらないでくれて助かった。
それを坂田に言ったら

「まぁ、センラの頼みやし...」

って、本当にこいつはいいやつすぎる。
それからどこでこの関係が変わっていくかというと、このすぐにあと。
一年と少しの間店に来てくれていた志麻くんだけど、それは初めてのことだった。

「えっ志麻くんがお客さん連れてきたっ!?」

いつもは絶対一人なのに、こんな坂田がいる日に限ってお連れの方を連れてくるなんて。しかも、坂田をカバーしてやらないといけないこのタイミングで。
思わず身に着けていたベビードールの裾を握りしめる。
センラ?と心配そうに俺を見上げる坂田になんとか笑い返して

「坂田、次のお客さんね...俺のお得意さんなんやけど、初めてのお客さん連れてきたんやって。志麻くんが連れてきた人やから悪い人やないいと思うけど...頑張ってな?」

「頑張ってって、なんかあったらセンラが助けてくれるんやろ?」

あぁもう、こいつの前でだけはこんな情けない姿見せたくなかったのに...
志麻くんが来るってだけで、平常心じゃいられない。

「あー...うん、ごめんな?...志麻くんはっ...無理、や...」

いくで?って坂田の腕を掴む。伝わってくる体温が熱い。
多分、熱いのは俺の方。
きっと坂田にだって気づかれている、俺の様子がいつもと違うこと。
高鳴り出した心臓を必死に抑えながら坂田を連れて志麻くんのことを待った。

「センラ」

その声に俺たちは顔を上げた。
こちらを見つめる二人、一人は俺の名前を呼んだ志麻くん。
もう一人は志麻くんが連れてきた坂田にお願いする人なんだけど...
お世辞じゃなく、こんな人いるんだって思うくらい顔の整った人。少し、背は低めだけど。
なんなん?志麻くんの周りってかっこいい人しかおらんの???

「へぇ...店の中はこんな感じなんだ...」

思ったよりも低くて、耳にゾクッとくるような軽いハスキーボイス。
ちらりと横を見ると、坂田はもうその人に見惚れているようだった。
そりゃそうだ、もし俺が志麻くんより先に出会っていたら正直かっこええなぁって惚れちゃっていたかもしれないくらいやもん。

「センラはこっちな?」

お連れの人を見ていたのが気に入らなかったのか、志麻くんに突然腕を引かれてソファーに連れていかれる。
いつも俺と志麻くんが座る定位置に腰掛けた彼は、慣れたように俺を膝の上に上げて突然のキスを落としてきた。

「ンっ...ぁっ、ちょぉ、志麻、くんっ...」

酸素を求めてうっすらと開いた唇の隙間から喉に流れ込んできたものは、志麻くんがいつも来店一番に頼む度数のきついウイスキー。
飲めるったってそんなに強くない俺はこんなことされたらすぐにぐらっときてしまう。
多分、志麻くんの口移しのせいでなおさら。

「っ...せんら...?」

小さく聞こえた坂田の声に、はっとした。
だめや、今日は坂田がいるんだから。何かがあったら俺が助けてやらんとあかんから、俺が潰れるわけにはいかない。
だけどそんな俺の心情なんかしらない志麻くんは、口に含んだ酒を全て俺に流し込んだあと、それをかき混ぜるように舌を絡めて酸素も理性も奪っていく。

「ぁっ...ん、志麻くんっ...はっ、」

無理に飲ませてくる人には気を付けてって、俺が言ったのに...
これじゃ坂田に何を言われたって言い返せないやん。
飲み込みきれなかった酒が口の端から漏れてこぼれる。顎から首元を伝って身に着けていたレースを濡らした。
唇が離れた時にはもう、俺の目に志麻くんしか映っていない。

「で?何回浮気した?」

「そんなんっ...数え切れんよっ...」

「でも今は?」

「っ...志麻くんだけ」

志麻くんに触れられるたびに、他のお客さんに触れられたくなくなっていく。
志麻くんが来たら全身に触れてほしい、消毒をするように、他に触られた感覚を塗り替えてほしい。
俺の心はこんなにも、他に浮気なんかできないくらい志麻くんでいっぱいなのに。

「相変わらず綺麗やね」

「んっ...しまくんが、触ってくれはるから...きれいにしんと、」

「ほんと、センラは俺を喜ばせるのが上手やね」

「ぁっあッ...んっ」

解かれたレースの紐、志麻くんの前に晒された胸に俺の大好きな手が触れてくる。
まるでキスでもするかのようにピンク色の突起に吸い付いて、舌先で転がすように遊ぶ。
普通のお客さんになら触られても全然平気なのに、やっぱり志麻くんはだめ...。

声が抑えられない、頭がふわふわする、俺に今話せることなんて、志麻くんの名前を呼ぶことだけ

「ひぅっあっ、ぁ、しまくつ」

「ほら、いつもみたいにイケるやろ?」

「ぁ、ぅッあっ、だめっそんな...っだめやってぇっ...ぁ」

体触れる指先と、キスで口をふさがれるのと、耳元で何度も呼ばれる名前に、俺はいつだって何も考えられない。
どのくらい時間が経っただろう、いつも通りのスタッフの「お時間です」って声に目が覚める。

今日はまだ時間ある?今日も延長してくれる?って希望を込めて志麻くんを見れば、慣れたように一言を。

「延長で」

仕事が忙しい時以外、志麻くんは絶対に延長してくれる。俺はそれがいつも嬉しくてたまらなくて、大好きだった。
だって普通の時間は激しく触ってくるくせに、延長してからの時間はまるでアフターケアのように、落ち着かせるようにやさしく触れて甘やかしてくれるから。
だから今日も、って思っていたのに...。

「ちょっちょっとまったぁぁぁぁぁっっ!!」

ぼうっとした頭で隣を見て思わず叫んだ。

「なんやセンラさん、突然叫んだらうるさいやろ」

いや、叫ばずにいられるわけがない。
だって俺がカバーするから安心しぃ、なんて偉そうなことを言っていたのに...
隣で志麻くんの連れてきたイケメンの腕の中で坂田がとろっとろのくたくたにっっ!!
た、確かこの人、浦田さんっていっとったよね!?

「志麻くんすみませんっ今日は延長なしでっ浦田さんっ?坂田になにしたんっ?こんなとろとろにっっ」

もう志麻くんに触ってもらったとか気持ちいとか全部忘れて、浦田さんの腕の中から坂田を奪いとる。
ふらふらの坂田を抱えて、志麻くんにひとこと謝って下がろうとしたとき、

「坂田」

後ろから聞こえた声に振り返る。
うらさん...?なんて呟く坂田に驚いた。それにくすっと微笑む浦田さんにも。

「また来てもいい?」

「ぇ、あ、はいっ」

今日初めて会ったはずの二人が、なんだか俺よりもずっと幸せそうで。
正直少しだけ、ほんの少しだけ羨ましいと思ってしまった。

あとから「惚れた?」なんて聞けば、真っ赤な顔を隠して小さくうなずく坂田。
まるで初めて志麻くんに会った俺みたいだ。

「基本的にはお客さんと恋愛はしちゃいけないってことになっとるんやけど、坂田は明日が終わったらもうこの店のスタッフやないからね」

インフルエンザだと思ってた店の子は、インフルではなくて。
坂田が手伝いで入ってくれるのは明日までって話になった。
そうだ、浦田さんはさっき「またね」って坂田に言っていたっけ

「明日、来てくれるとええなぁ」

ちょっとだけ、意地悪だったかもしれない。
坂田はきっと一週間いるって伝えてると思うし、今日の明日なんて来るはずがない。
志麻くんでさえ最低でも一日は空けてくる。
それなのに坂田はただ純粋な笑顔で

「なぁセンラ、明日も、服...真っ白なレースのやつがええ...」

ほんのちょとイラっとしてしまったのは隠しておこう。
本当に、あの頃の俺みたい。純粋に運命ってやつを信じていたころの俺。

きっと浦田さんが言ってくれたんだろう「似合ってるよ」とかそんなこと。

俺も一緒だった。
だけど俺は坂田よりちょっとだけ悪い意味で頭がいいから、志麻くんと"客と店員"これ以上の関係になることはないのはわかってる。

わかってるから...
ふわりと笑う坂田が微笑ましくて、愛おしくて、それと同時に、苦しかった。


次の日の閉店時間間際、彼はやってきた。
正直予想外過ぎて言葉が出てこなかった、だって昨日の今日だ、坂田はあと一週間はいるって言ったんやぞ?この人は、本当に坂田のことを想って...

「あのっ...もう、閉店だよね...?」

最後の客も帰して最終オーダーも締め切った。
受付のスタッフと今日の売り上げの話をしていた時に入ってきた浦田さん。
息も切らして、暑そうにスーツのネクタイを緩めながら心配そうな目で俺を見ている。

閉店だよ、もう入れない。

そう、言ってやろうかと思った...。
でも今日一日中この人を待っていた坂田を見てしまっているから、自分も同じ立場だったら、志麻くんに会いたいと思うから。

「誰をご指名?」

少しだけ、二人の手助けをしたって、誰にも怒られないやろ...?

「1人だけ、閉店後なら案内できる子がいるんやけど」

浦田さんはそのかっこいい顔を崩すことなく驚いた表情を向ける。
閉店後なら、そんな意味深な提案、よほどのアホじゃなければわかるはずだ。
それが坂田だってこと

「その子、手伝いのこやねんけど今日で終わりなんよ」

「ッ...なんで、それを俺に?」

「もう店の人じゃないなら、王子様に攫われたって誰も文句言う奴はおらんってこと」

まるで、王子様みたいだ。
坂田に会いたいって気持ちが溢れてわかりやすすぎる。
俺にはこんな勇気はない。だって、迷惑がかかるかもとか、ここまでして会いたいって思ってるのが自分だけだったらどうしようとか、絶対考える。

多分、感情よりも理性を優先してしまうそこが、俺が運命って言葉を信じきれない理由だろう。

だから、すごいなって...いいなぁって。
きっとこの人は、坂田のためやったら、なんでもしてくれるんだろうなぁ

「坂田な、今日ずっと浦田さんのことまっとったんよ。俺の親友。泣かせたら、許さへんから」

坂田のいる控室の扉を開ける。
驚いて、でも嬉しそうに名前を呼んだ坂田の声に、なんだかこっちが泣いてしまいそうになった。
店の鍵は俺が持っている。幸い明日店を開けるのは俺の仕事だ。

「頑張れ...がんばれ、さかた...」

なんて誰にも聞こえないであろう言葉をこぼす。

よかったなぁ、坂田。

なんて他人行儀な。
どうせ聞こえないからと、心からそう思えているのかわからないセリフを吐いて俺は店の外に出たんだ。


王子様が攫っていったって気が付かない...か。
我ながらなかなかにロマンチックなことを言ってしまった気がする。
王子様が攫ってくれるのをずっと待ち焦がれているのは俺の方だったって言うのに。

「ええなぁ、坂田」

手伝いだから自分を縛るものは何もなくて、それにあの浦田さん。
きっとルールなんか無視して坂田のためならなんでもするし、どこへだって迎えに来てくれるんだろう。

でも俺には...俺らには、それはない。
だって志麻くんも、俺も、


悪い意味で大人なんだ


王子様の迎えを待つのは現実味がなさすぎる。
志麻くんだってこの世界で生きていくためにルールは破らない。
それに俺を縛るのは、志麻くんの気持ちを何一つ知らないということ。

そりゃそうだ、店のルールには"客と恋をしてはいけない"もちろん志麻くんから気持ちを確かめる言葉もなければ、俺から伝えることもできない。
もし、そんなルールがなかったとしても臆病な俺には到底無理だ。
所詮客と店員だろ?って、この関係が崩れてしまうのが怖い。

「頑張れ」


人はもう帰った。
暗い店内、残っているのは坂田と、王子様だけ。
裏口のある路地から表に出て、メイン玄関の鍵がし待っているのを確認してから、大きく息を吐いた。
まさか自分がこんなにも弱かったなんて思ってもいなかった。
叶わないと諦めていた欲が、身近に実を結ぶだけで、目の前の他人の幸せがこんなにも苦しいなんてっ...

あぁだめや、自分はこんなに泣き虫だったやろか...
違う、ずっとため込んでいたから。
ぼろぼろと零れ出る雫に思わず俯いてその場にしゃがみ込む。
大丈夫、誰にも見られることはない。
この通りはもともと人通りが少ない方だから、このあたりの店が開いていないこの時間は誰も...

「おいっ大丈夫かっ?」

「ぇっ...うそ、なんで...?」


焦ったような声、強く腕を掴まれた。
聞きなれたその声は、紛れもない、俺の一番好きな人。

「なんで...ここにおるんっ?...志麻くん...っ」

心配そうに俺をのぞき込んでくる志麻くんはまるで王子様みたい。
だめやなぁ俺、疲れとるんかな?さっき坂田を見てしまったから少しだけ期待をしていまう。
志麻くんの顔を見たら、溢れた涙が止まらなくなって、だけど志麻くんは優しい手で俺を撫でて

「どした?」


なんて聞いてくれるから
今、俺は普通の服着てるんよ?
えっちな服も着てないし、えっちなことも言えへんよ?
志麻くんの好きなお酒だって作ってあげられない、店の外では普通の男やよ...?


それでも志麻くんは、そんなに優しい顔で俺を見てくれるんやね

「俺のこともっ、攫ってくださいよっ...王子様みたいにっ...ッ」


これは弱った俺の本心でもあるし、賭けでもあった。

お願いただの遊びなら
「何言っとるん?」
っているもみたいに笑い飛ばして...

ごめんなさい、迷惑かけて、ごめんね、この関係性を崩してしまって、ごめん

「センラ」

いつもの俺と違うから志麻くんはすっごく驚いた顔をして、それでもすごく優しい声で俺の名前を呼んでくれた。
俺の腕を掴む手に力がこもったままなのは、期待してもいいのだろうか

「立てるか?」

「えっぁ、どこっ行くん?」

「とりあえず、センラを抱きしめられるとこ」

それってっ...ッ
心臓がうるさい、止まらなかったはずの涙はいつの間にか止まっていた。
目尻に残った雫を志麻くんは指の腹で撫でるように拭って腕を引く。

抱きしめられるとこって聞いて、ホテルを想像してしまった自分を殴りたい。
だけど、これはっ...


「あの、志麻くんっ...これ、恥ずかしいん、やけど...」

「いつもこうしとるやん?」

ホテルの妄想をしてしまった自分よりはるかに恥ずかしいそれ。
高そうな車、運転席の椅子を引いて座る志麻くん、その膝の上に座る俺。
こんなことならまだいっそホテルに連れていかれた方が緊張しなくて済んだかもしれない。

「なんでこんなことにっ」

「センラ」

「んっ...」

ちょっと黙ってって小さい声。それから俺の口を塞ぐようなキス。
あぁやっぱりだめ、志麻くんに触れられると俺が俺じゃなくなるみたい。
それに今日は何もかも違う。
派手に着飾った店じゃなくて、周りには誰もいない。服だって普通の服で、うるさいBGMもない

「っ...しま...くん、っはぁ、」


心臓の音がやけにうるさい、狭い車内、俺たちの呼吸音しか聞こえないその空間では、志麻くんが俺の名前を呼ぶ甘い声も、鼻から漏れる吐息も、角度を変えるたびに響くリップ音も、俺を溶かす材料にしかならない。

「少しは落ち着いた?」

「落ち着けへんよ...こんなん」

ゆっくり離れた唇で大きく息を吸って、志麻くんの肩にもたれるように顔を埋める。
そんな俺を抱きしめて落ち着かせるようにぽんぽんと背中をたたいてくれた。
「俺、そんなに子供じゃないよ。」って問えば、俺の大好きな顔をして小さく笑った志麻くんは、「子供相手にこんなことせぇへんよ」って。
まるで俺が夢見てた恋人同士みたい。

「で、なんでセンラは泣いてたん?」

「...浦田さんが、来たんです、閉店ギリギリに」

「あー、間に合ったんか」

どうしよう、なんて言おう、だって涙が止まらない理由を話すのは、志麻くんのことが好きだと言ってしまうようなもんだから。
浦田さんになんか言われた?って問いに急いで首を振る。
彼は悪くない、むしろ坂田を迎えに来てくれて感謝している。

「志麻くんは知ってはったん?浦田さんが来ること」

「知ってるも何も、俺は浦田さんを迎えに来たんよ。そうせ閉店に間に合わんくて店の前で落ちこんどるやろな思って」

「なんでギリギリに?坂田は一週間はいるって話やったのに、別に明日でも...」

「今日会いに行かんともう会えない気がするって言っとった。あの行動力には俺も驚かされてる」

すごいなぁ、聞けば聞くほど運命みたいやん。
明日だともうきっと浦田さんは坂田に会えなかったから。
次の言葉に詰まった俺の顔を上げさせた志麻くんは、俺の言葉を催促するように視線を合わせる。

「俺がここにいた理由は答えたで?次は、センラの番」

「...俺が、何を言っても...嫌いにならんでくれますか...」

「...それは、センラの言葉次第」

当たり前やん!なんて言わないところが志麻くんらしい。
それでも俺を支えてくれている手が力強くて、優しくて、きっと大丈夫だと思えた。

はぁ、と大きく息を吐いて整えた。
それから、志麻くんの胸元のシャツを握る。

「羨ましかった」

ぼそっと呟くような声だったけど、志麻くんはしっかりと聞き取ってくれて「羨ましい?」と聞き返してくれる。
他の人からしたら、何が?って思うかもしれないが俺にとっては重大なこと。

「坂田は、どこにいても迎えに来てくれる王子様がいたんです」

「それは、浦田さんのこと?」

「彼はきっと、立場とか、これからのこととか、なんも考えずに坂田のために動いてくれるんやろなぁって」

「それについては浦田さんがバカなだけやろ」

「そうやね、あの人はすっごいバカ。だって普通なら考えるやろ、店のルール破ったら仕事ができなくなって、そしたら生活も厳しくなって、王子様がいつまで隣にいてくれるかもわからない、いつ自分飽きるかもわかんない。煌びやかな衣装を脱いだ自分には価値なんかないんやないか」

だけど、どうしようもなく羨ましくてたまらなかった。
止まっていたはずの涙がまた零れそうになって俯いた。
だめだよ泣いちゃ、今でも俺は十分幸せなんだ、これ以上を望んじゃいけない。
だって店の外で志麻くんに会えて、こうやって普通に話をしているだけでも夢みたいなのに。

「...なぁセンラ、いくつか質問するけどええ?」

「ん...なに?」

「なんでこの店で働いとるん?」

「大学の時は、お金がなかったから、やめたら生活できんくなるし。それが、今まで続いてる」

それに、やめてしまえば志麻くんに会えなくなる。
こんな仕事を続けられるのは、今日も志麻しん来てくれるかな?って思って頑張れていたから。

「なら、働かなくても生活できるんやったら、店やめてくれんの?」

「えっと、それって...どういう」

「最後の質問。センラ、俺のことどう思っとんの?」

ッ...どうって、
恐る恐る顔を上げれば真剣な目をした志麻くんと目が合って、そらすことは許されない。
志麻くんの言ってる意味、わかんない。
なんて答えればいいの?志麻くんのこと、好き...でも、それを伝えたら、もう今まで通りじゃいられない

「俺はもうずっと前から、センラしか見えてないんやけど」

「えっ...んっっ」

突然のキスに言葉が詰まる。
さっきと同じ...いや、それ以上に甘い

「店の中じゃ間違っても言えんやろ、こんなこと」

「んっは、ぁっ...志麻くんっ...さっきから、何言って...っ」

開いた唇の隙間から入ってきた舌に絡み取られて俺の言葉は続かないまま飲み込まれた。
やっぱり志麻くんに触れられると、何も考えられなくなるっ...


「好きだ」

耳に寄せられた唇が、かすかに動く感触がする。
いつもよりちょっとだけ低くて、甘い声に胸焼けしてしまいそうになる。
一瞬で、真っ白になった。
固まった俺にわからせるように

何度も

何度も

唇が耳たぶから
首筋を伝って

「好きや、センラ」

「ぁっ...ゃ、なにっしまくっ...ぅあ、」

ぶわっと瞳を潤わせたのは、さっきとは真逆の涙。
わかんない、でも、このまま溺れてしまいたい。

「お前は?」

って、志麻くが俺を見る。
もう、逃げられない。
二人だけの世界、ここでは店のルールなんか関係ない。

「好きですっ...志麻くんっ...」

好きなんです、もうあなたなしでは生きられないくらいに。
服をぎゅっと握って声を絞り出せば、志麻くんは満足そうにいつもみたいな笑みを浮かべる。もう一度「好き」と声に出すとまたキスで口を塞がれた。
角度を変えて、深く

「これだけじゃあ足りない」

「え...?」

「俺以外のやつに触れられるセンラを想像するだけで狂いそうになる」

「ねぇ待って...そんなこと言われて俺、どうすればいいんっ...?」

そんなこと言われたら期待してしまう、俺だって志麻くんのせいで、志麻くん以外に触ってほしくないってずっと思ってる。
トンっ、と胸を押したのは自分なりの小さな抵抗。
志麻くんのことは好き、流されてしまいたい、だけど怖い。
志麻くんがこの先言おうとしていることがわかってしまったから

「店、やめろ」

「やめたら生きていけへんよ」

「もう他のやつに触らせんな」

「そしたら、仕事にならんってっ...」

ごめんなさい志麻くん、俺はとっても臆病やから。
もっと確実な言葉が欲しい。

「俺がセンラのいう王子様になってやるから、だから黙って俺に攫われとき?」

まさか、志麻くんからそんなことを言ってくれるだなんて、お店の中では想像もできなかった。
胸を押していた手のひらを握りこむ。
俺は面倒やから、坂田みたいに純粋でも素直でもないから

「志麻くんは、最初から十分俺の王子様でしたよっ...?」

これが、自分なりの精一杯の返事。
さっきまでのキスなんてなかったんじゃないかってくらい軽い触れるだけのキスを、今度は俺から。

「坂田はいいん?浦田さんなんかに任せて」

「志麻くんこそええの?浦田さん迎えに来たんやろ?」

早く攫ってよ、後戻りできなくなるように

あいつはいいよ、なんてかるく答えた志麻くんは俺を膝の上からおろして助手席に座らせる。
つけてくれたシートベルトを見て思わず口元が緩んだ。
だってここは、俺がずっと夢見てた場所。
お客さんと店員なんてない、志麻くんの隣。

「ねぇ志麻くん...センラ、仕事辞めてもええんよね?」

「当たり前やろ。逆に辞めないとキレるで」

「もう、志麻くんのものってこと?」

「それ以外何があるん?」

「さっきのもう一回言ってよ...センラのこと、好きってやつ...」

走り出した車がどこへ向かっているかくらい俺だった予想がついた。
俺の問に前だけを見ながら答える志麻くんの姿、ハンドルを握る姿にドキドキしながらその横顔を見つめる。

「そういや、センラ店にいるとき全然違うんやね」

「...それは、接客の俺の方がええってことですか?」

「いや、着飾ってない今の方がめっちゃ俺好み」

もともと、どタイプだったけど。
なんてやっぱり志麻くんはいけずや。
赤信号で止まった車の中、志麻くんが俺の方を向く。ハンドルから離れた大きな手は俺の髪をくしゃりと撫でて、それから耳元で囁いた。

「センラが欲しい言葉は後で嫌ってほど言ったるから、もう少し待っててな?」

ずるい。
俺の欲しい言葉はすぐにくれないくせに、焦らして、焦らしてから、もっとドキドキする言葉を押し付けられる。

すぐに変わった信号機。
髪から志麻くんの大きな手が離れていく。
またハンドルを握って前を見るその横顔を見ながら、俺は赤くなった顔を隠すように俯いて、志麻くんが触れてくれた髪に触れた。

「ゃ、あっあ、まってっ...」

「センラ、腕どけて」

「だめっしまくんっ...ぁうっあ」

知らないの、こんなところまでっ
やって俺っ...初めてやからっ

そんな言葉も出せないまま、どきどきで心臓が締め付けられる。
自分の恥ずかし顔を隠すために覆った腕は、志麻くんに掴まれて簡単に除けさせられた。

「いい加減力抜けって」

「っ、で、でもっ...やって、」

志麻くんの車は俺の想像していた場所に入って行って、止まったかと思ったら腕を引かれ中へ連れ込まれた。
恋人同士が愛し合う場所、世間一般的にはラブホという場所で、志麻くんは見たこともないような大きくてふかふかのベッドシーツの中に俺を沈めた。

腕を掴む力は強いし、我慢できないとでも言うように強い視線を向けてくるくせに、ひとつひとつの動作が優しい。
そのせいで、俺は何も言えなくなってしまう。

「そんなに嫌?この先に行くん」

「そうやないっ!俺やってっ、センラやって、志麻くんとっ...」

「じゃあなんでそんな苦しそうなん?」

教えて、センラのこと。
安心させるような深いキス、唇が離れてから閉じていたまぶたを開けば目の前にある広い天井と志麻くんの俺を見下ろすかっこいい顔。
幸せすぎてどうにかなりそうなまま、志麻くんに体を預けたはずだった。
それなのに、ここに来て体が言うことをきかないなんて。

俺ですら初めて触れるところに指を伸ばされる。
ここは店の外、俺たちは恋人同士、もう迷うことなく志麻くんは触れてくる。
長くてごつごつした男っぽい指先が、誰にも触れさせたことなかった秘部に入り込んで内側から俺を愛しにかかる。

「ぁっ、う、ゆび、だめゃぁっ...」

「センラ、何がダメ?教えて」

志麻くんは指は俺の体を刺激して、初めての場所なのに体が熱くなって変な声が漏れて、でも気持ちよくて、それからこの先もあるなんて。
完全にキャパオーバーだった。
指を何本も飲み込む自分の体にすら驚いているのに、これから、志麻くんのを受け入れるだなんて...
早く繋がりたい、ひとつになりたい、気持ちはそう思うのに。だけどいざ志麻くんのズボンを押し上げるそこを見てしまうと怖気づいた。

「っ...幻滅...せぇへん...?」

「今更なにを」

「せんらなっ...?するん、はじめて...やから、その...怖くて、」

「は...?」

志麻くんから次の言葉が聞こえない。
期待外れやったかな?嫌われた?そりゃあそうだ、あんな店で働いて慣れてる風を装って、それが今更怖いだなんて

「ンっ...ふ、ぁっ...は、しまく...っ?」

次の瞬間突然降り注ぐキスの嵐に呼吸もうまくできなくなる。
唇が塞がれて、体に志麻くんの体重が乗る。
強く抱きしめられた耳元に響くのは、志麻くんの珍しく余裕のない声。

「すまん...興奮した」

「なっなんで、」

「都合いいように解釈するけど、それっていろんな奴に触れさせてんのに、許してくれるのは俺だけだってことやろ?」

「あっあたりまえやん!!センラは志麻くん以外好きやないしっ志麻くんの手以外気持ちいいって思ったことあらへんもんっ!」

ごめん、うれしい
って今度は腕を引かれてシーツが背中から離れていく。
うわって情けない声を上げた俺はまた志麻くんの膝の上。苦しいくらいに抱きしめられて

「ほら、これなら怖くないやろ?」

いつもみたいに膝の上、どきどきよりも今は、安心する。
どう?、と俺の顔をのぞき込んでくる志麻くんはやっぱりどうしようもなくかっこよかった。

「怖くなくなるほど溺れさせたるから。信じて、志麻のこと」

「...はい...っ」

「センラ」

「っ...しまくん...触って...っ?」

いつもと同じ態勢で、いつもと同じような言葉を言ってみたのに、やっぱり全然違っていた。
雰囲気も、音も視界も、全部

「センラ、ゆっくり腰落として」

「ンっ...ふ、ぅっはっ」

「支えててやるから、大丈夫やで」

「っ...ひっぅあッ...しぁくんっ胸、だめっ」

志麻くんの肩に手を当てて膝をベッドにつけて体重をおろしていく。
指なんかとは比べ物にならないくらい熱くて大きいのが、俺の体を押し広げるように入り込んでくる。
ゆっくり、ゆっくりって思うのに、俺の緊張を解こうと志麻くんが胸の突起に口をつけるから

「やっあぁ...ぁっしまくっこわいっだめ、...ぁっはいっちゃ、うっ」

「もう少しやよ...息、吐いて」

「はっぅっはぁっやだぁっおっきぃ、ぁっう、はッ」

もうだめ力なんか入らない。
腰を支えてくれている志麻くんの腕に全体重をかけて胸に倒れこむ。
ぎりぎりまで立てていた膝はもう震えて使い物にならない。
ギシリ、とベッドが小さな音を立てるのは、志麻くんが俺の中に馴染むように小さく動いてくれるから。

「頑張ったなぁセンラ...ほら、これで全部」

「はっ...ぁっぜん、ぶ...っ...?」

「これ、わかる?入っとるやろ?」

「ぁ、どしよ...っしまく、うれしっ...っ」

嬉しいくて、幸せで、今日何度目かもわからない涙が頬を濡らす。
志麻くんから嫌ってほど伝わってくる思いが、もっと俺を満たしてくれる。
おなかの中がいっぱいで、苦しくて息もできないけど、それでもいいって思えるくらい満たされてるって感じる。

「センラ、次は俺のことも喜ばせて?」

「っ...もう、他の人なんていややっ」

「うん」

「あんな仕事なんかやめるし、志麻くん以外に触られたくないっ」

「おん、それから?」

「せんらをっ...志麻くんだけのものにしてっ...」

「上出来」

ふっ、ってかっこよく笑ってくれた志麻くんは俺を愛おしそうに抱きしめてくれて、それからはずっと頭がおかしくなっちゃうくらいの言葉で

好きや、愛しちゅうよ、って..._____


「センラ、仕事辞めれてよかったやん」

「手伝わせてすまんな、坂田」

「ええよ、このくらい。僕もお前のおかげでうらさんと会えたんやし...」

店は、仕事を辞めるといっても何も聞かずにすぐに辞めさせてくれた。
普通はもっと何か月も前から言うことなのに申し訳ない...とは思ったが、そもそもこんな風俗店に常識を求めるものでもないかと一人で納得する。
でもすぐに辞められていろいろと都合がよかった。
あと二か月...なんて言ったら志麻くんに何を言われるか...

「あれ、坂田、俺の白い衣装知らん?」

「んー?白ってこの布のやつ?」

「いや、それやなくて...」

露出が少ないレースの衣装。
みんなに俺にしては珍しいって言われたけど、俺の中では一番大切で大好きな衣装だった。

「そんなに大事なん?もう着いひんやろ」

「そうなんやけどっあれは、」

あれは、志麻くんが綺麗っていってくれた服だったから。
他の服はどうでもいい、あれだけでも持って帰りたかったのに...
更衣室の荷物は手伝いに来てくれた坂田のおかげでおおかた片付いたと思う。あとは志麻くんが迎えに来るのを待つだけ。

「センラさん、VIPルームでお客様がお待ちです」

「えっ?」

いつものように俺を呼びに来たスタッフは、さぁ、とドアを開く。
お客様って、俺はもう仕事はっ、それに今私服やしっ

「いや、俺はもう、」

「センラいいから行ってきい、最後のお客さんやと思ってさ」

「でもっもう志麻くん以外っ」

「いいから!」

いつもはもっと頼りなさそうなくせに。
坂田に背中を押されて廊下に出る。手ぶらだし、服も私服だし、なんで...
いつもみたいにスタッフに案内されて、しかも珍しVIPルーム。
もし常連さんとかだったら事情を話して謝ろう。
そう、恐る恐るドアを開けると

「遅かったやん、センラ」

「っ...なんで、志麻くんがっ??」

大きなソファーに腰かけていたのは俺のことを迎えに来てくれるはずだった志麻くんの姿。
驚きで固まっている俺を笑いながら、早く来いよって自分の膝をぽんぽんと叩く。

「最高やろ?最後の客が俺なんて」

「センラは、最初から最後まで、志麻くんがよかったですよ...」

「早くこれ着てや?俺だけのために」

「これっ、無くなったと思っとった」

渡された衣装は紛れもない、俺が探していた一番大切な白のレース。
志麻くんが、きれいだって言ってくれたベビードール。
あぁもう、どうして志麻くんは、こんなに俺を喜ばせるのが上手なんやろう

志麻くんの目の前で来ていた私服に手をかける。
まるでストリップショーでもしているかのように脱ぎ捨てて、俺は真っ白なレースに腕を通した。

「これが最後の仕事か...」

「どしたん、まだ働いてたかった?」

「そうやないけど、思い出すと懐かしくって。志麻くんと初めて会った時のこと」

あの日がなかったら、あの日に出勤じゃなかったら、あの日に志麻くんが来ていなかったらきっと、俺はこんなに幸せになれていなかったんだろう。

お疲れ様、自分。
そんなことを想いながら、最後のお客様に最後のセリフを。
志麻くん、センラは今、最高の幸せ者です

「ねぇ、お客さん...触ってくれはる...?」

fin♡


この後4人で仲良くなってダブルデートとか行ってほしい。
初めて4人であった時センラさんは浦田さんのこと「坂田のこと大切にしてくれてるのはわかるけど、なんかいけすかないんよなぁ」とか思って表面上だけニコニコしててほしい。でもなんかあって、けっこういいやつやんってなって「うらたん」とか突然呼んでほしい

浦田さんはセンラのこと、店でみたやつぜんぜんイメージちげぇ......
表情読めねぇ...俺あんま良く思われてないよね...?
ちょっと苦手かもでも坂田が信頼してるやつだし、志麻くんの大切な人だし...ってなっててほしい。

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